大神神社(奈良県)のなで兎


はるばるやって来ました。奈良は桜井市。こちらには日本最古の神社のひとつと言われる「大神神社」があります。ご神体が神社の背後にそびえる「三輪山」そのもの。
JR三輪駅からは美しい円錐形の神山(おやま)を望むことが出来ます。

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駅前から門前町を通り抜けます。ここは「三輪」。かの「三輪そうめん」はここが発祥であり、そうめんそのものも最古であるらしい。誘惑に負けず進むと、参道には数々の屋台が。草だんごみたらしの誘惑には多少誘われつつ、辿り着いたのが、大神神社の「二の鳥居」です。

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この鳥居をくぐると、これまでの観光地的雰囲気はなくなり、神聖な雰囲気へ。木々に囲まれ、ゆるやかに登っている参道を進みます。

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そして現れる鳥居(?)。柱に注連縄のみというとても珍しい形。ちょっと原初的なものを感じます。
この注連縄、左側が太くて右側が細くなっている「左本右末」。普通の神社とは逆で、出雲大社・熊野大社などに見られる方向でした。国津神を祀る神社に多いらしい。

oomiwa0001鳥居といえば、大神神社にはもうひとつ拝殿の奥と神山との間をしきる鳥居があるらしく、明神鳥居3基を合わせた独特の形で「三ツ鳥居(別名 三輪鳥居)」と呼ばれています(・・・拝殿に入ってないので、今回は拝めませんでした。パンフより拝借。)。かの「サントリー」の語源となったとか、ならないとか。

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そして拝殿です。この奥には三ツ鳥居があり、その先は三輪山。三輪山自身をご神体としているため、本殿がありません。この拝殿から三輪山を拝む古神道の形を残しています。

祭神 大物主大神(おおものぬしのおおかみ)
配祀 大己貴神(おおなむちのかみ)
少彦名神(すくなひこなのかみ)

境内にある縁起によると

・・・大物主大神とは大国主神の和魂(にぎみたま)(幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま))で、大国主神が神代の昔、国造りに労せられたとき、その和魂が現れ、問答の後、自らこの三輪山に鎮まられたのであり・・・

古事記では、少彦名神が亡くなり大国主神が悩んでいた時に、「海を光(てら)して依り来る神」(この神が大国主神の和魂)が協力を申し出られたそうで、その神を祀ったとあります。・・・自身(大己貴神)と自身の和魂(大物主大神)が一緒に祀られている・・・この辺りややこしいですね(オオクニヌシ=オオモノヌシ=オオナムチ=三輪神 が全て同一ではなかったのかもしれません)。

拝殿は重要文化財。寛永4年(1664)徳川家綱改建で、唐破風造の大向拝が見事。葵の御紋が入っています(他に、桐紋と菊紋と神紋と思われる三輪紋)。鴨居には、鹿が彫られています。そういえば、狛犬がいなかったですね。

拝殿に向かって左手、参集殿に向かいます。入口を入ると・・・。

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いらっしゃいませ~♪

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「なで兎」様でございます。

卯は神社にとり、ご神縁の日として崇神朝以来、卯の日にお祭りを毎月奉仕しております。卯は兎にあてられ、この兎は江戸時代よりの一の鳥居前の大灯籠の火袋を守っていたものであり「なで兎」として伝わっています。(「なで兎」説明書きより)

まずはなでて下さい。ご神助、満載です。

一の鳥居というのは、今回は訪れていませんが、国道沿いの昭和に出来た大鳥居との間にある鳥居のこと。大鳥居の陰になってしまいマイナーですが、どうやら本来はこちらが一番最初にくぐるべき場所のようです。当時は一の鳥居の大灯籠の一番上で卯の方向(東)、すなわち三輪山を向いていたとのこと(大神神社HPより)。大灯籠は戦時中に供出されてしまいました。
台座部分には美しい波文様が描かれています。

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大物主神と同一とされた大国主神と兎との話といえば、おなじみの因幡の素兎伝説。大国主神を仰ぎ見ている姿はまさにそのものかもしれません(今は南向いてますが)。
ところで、古くからなぜ卯の日を神縁の日としているのでしょうか? 卯と兎、どちらが先だったのでしょうか? 研究を進めると見えてくると良いなと思います。

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名残惜しいですが、なで兎さんを離れ、境内の奥へと進みます。

すると現れるもう一つの注連縄鳥居。奥には社殿が見えます。

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狭井神社(さいじんじゃ)です。
檜皮葺の屋根は、鬱蒼と苔と草に覆われ玄妙な雰囲気。

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正式社名 狭井坐大神荒魂神社(さいにいますおおみわあらみたまじんじゃ)
主祭神 大神荒魂神(おおみわのあらみたまのかみ)
配祠神 大物主神(おおものぬしのかみ)
姫蹈鞴五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)
勢夜多々良姫命(せやたたらひめのみこと)
事代主神(ことしろぬしのかみ)

三輪山に坐す「和魂」に対して「荒魂」を祀っています。大神神社と違って奥に本殿が見え、つまりご神体は山ではないようです。配祠神は、大物主神の近縁で、姫蹈鞴五十鈴姫命は神武天皇の皇后。2人の結婚で、国津神と天津神の系統が“再び”一緒になったと伝えられています。
延喜式神名帳に記される古社で、華鎮社(はなしづめのやしろ)とも称され、疫病を鎮める神としての信仰を受けています。社名の由来ともなった神水の湧き出る薬井戸が拝殿左手にあります。

拝殿右手で三輪山への参拝への申し込みをすることが出来ます。神主さんが「神様の体内に入っていくと思って下さい」と言っていたのが印象的。参拝証であり、参拝の略装ともなる襟タスキを頂いて、右手にある神山の入口から入ります。自分で幣を取り、左右左と祓います。杖が入口脇にあるので、持って行くとだいぶ助けになります。

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往復約2時間半。ここから山頂までは写真撮影、余分な会話、水分補給以外の飲食は禁止となります。これは神事なのです。途中すれ違った熱心な方は全く無言で裸足で登っていきます。一方、ちょっと登山の習慣も混ざってしまい、すれ違うときに「こんにちは~」という人も。まぁこれはこれで一体感は出るのでしょう。お遍路などでお馴染みの「ようまいり」と声をかけて下さる方もいました。

坂は楽ではありません。が、神聖な雰囲気が後押ししてくれます。パワースポットでもあるこの地では、筋肉痛にもならないとか(残念ながら、私は不信心なのか、不摂生なのか、少し翌日に来ました・・)

三輪山は全体が岩山となっています。松の巨木などが鬱蒼と茂りますが、岩肌であるがゆえに、根は横へ地を這うように伸びています。特に神聖視されているのは「奥津磐座(おくついわくら)」と「中津磐座(なかついわくら)」と呼ばれる、山頂と中腹にあるゴロゴロと黒い丸い岩が並ぶ場所。結界が張られており、そこへの立ち入りは禁じられています。

丸い黒い石がまとまっているこの磐座は、確かに非日常のものを感じました。岩の間から湯気のようなものが見えたような気がします。

地質学的に見ると、三輪山は領家花崗岩と呼ばれるみかげ石が多産する地域にあります。神山の下部は、粗い粒の花崗岩と緻密な黒い変成岩的な石が見られ、途中から山頂にかけては、中粒の閃緑岩~斑れい岩で構成されます。より硬く風化に強い斑れい岩があることにより、この円錐形の山容が生まれたのだと考えられます(例えば筑波山なども規模こそ違え、似たような地質で山ができています)。
磐座に見られる角のとれた岩は、花崗岩等に見られる方状節理に沿って、球状に風化が進んだものだと思われますが、それにしても見事に丸くなっている岩も見られました。

もちろん地質的な意味付けは、この神山の神聖さとは関係ありません。ここは間違いなく神の体内なのです。

さて・・・。

神山を下り、大神神社の境内まで戻ってきました。
社務所に寄ってみますと・・・神兎研会員にとっては宝の山が待っています!

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「なで兎」様を、お守りにした、その名も「なで守」。

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「なでうさぎ」を撫でると御利益があり、特に手や足などの痛みを取ってくれるといわれております。「なで守」にも撫でていただける金色のうさぎの部分がございます。どうぞ「なで守」を撫で、大神様のご神徳を受け、ご健康で御多幸な日々をお過ごし下さい。《HPより》

初穂料700円。レリーフによる「なで兎」様が愛らしすぎます。

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こちらは一般のお守り。財布に入りやすいようカード的な薄さだそうです。三ツ鳥居の前を跳ねる2柱の神兎。これは見逃せない。朱・青・黄色があります。(初穂料700円)

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珍しい「方除卯杖守(ほうよけうづけまもり)」。部屋の卯の方向(東)や玄関に掲げると、邪気を払ってくれるとのこと。「卯杖」とは宮中でも用いられてきた魔除け具。大神神社でも、卯杖を用いた神事が行われているとのこと。そして…。

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「なでうさぎ土鈴」!(初穂料800円)。平成23年より授与し始めたものらしいのですが、その存在感がたまりません。もちろん求めさせていただきました。

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なで兎の文鎮もありました(初穂料1000円)。重量感たっぷりです。

最後にはずせないのが、絵馬。

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縁結祈願絵馬
正面参道に鎮座する夫婦岩は、室町時代の三輪山絵図を見ると『聖天石』と称し、富貴敬愛を祈る磐座と記されております。
良縁を願えば成就し、夫婦そろってお参りすれば円満になる霊言あらたかな磐座として信仰を集めております。《由緒書きより》

「聖天」は歓喜天。ガネーシャです。2つの石が双身のイメージなのでしょう。
手水舎の脇に絵馬の奉納所があります。うさぎの絵馬がずらっとかかっております。ひとつ納めて参りました(初穂料500円)。

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古事記には、“赤い糸伝説”とでも言えるような三輪山の記述があります。

活玉依毘売(いくたまよりびめ)のもとに、正体不明の麗しい男が夜ごとに訪れ、やがて娘は子供を宿す。怪しんだ両親が「赤い土を床に撒き、麻の糸巻きの糸を男の衣の裾に刺しなさい」と教えた。夜が明けてみると、糸は戸の鍵穴を通って三輪山の社の所で終わっていた。そこで初めて、娘は男が大物主神であることを知った。
その時、戸の内には麻糸が3巻残っており、そこで、この付近を「三輪」と呼ぶようになった。(古事記・崇神天皇の条より)

ちなみに日本書紀の方には、女の元に通った大物主神が、蛇神である姿を現したというような説話があります。
絵馬の図が2羽の兎なのはなんででしょうね。縁のある兎を夫婦のイメージとして使っているのか、あるいは、大国主命と八上比賣(やかみひめ)を結びつけた因幡の素兎伝説とつながっていたりするのかもしれません。

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案内版の下のこんなところに兎が・・。

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大神神社を後に、門前町に戻ります。

登拝で腹が減りました・・・。駅の近くにに「大神神社御用達」の看板を掲げるお店が。そうです。三輪はそうめん発祥の地。赤い糸ならぬ、白いそうめんに誘われて入ります。

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栄寿司さん(奈良県桜井市三輪387/0744-42-6038/不定休/8:00~18:00頃。

年季の入った木のテーブルと、大きな掛け時計に古い金庫や民芸品。昭和レトロです。店の正面奥には大きい神棚もありました。さすが門前のお店です。

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汗をかいた後、体が冷えていたので、あたたかいにゅうめんと寿司セット(あとビール)を頼みました。私が住む関東の辛いつゆではなく、甘みのあるつゆで、ほっこりと温まります。しいたけの出汁が結構効いていました。

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ちなみに、町のそこここで、そうめんの端っこが売られています。ここらでは「ふし」と呼ぶらしいですね。おみやげにいいです。夜食にちょっと食べるに最適。

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近所のカフェには、なんかいい感じの関取オブジェがありました。大好きです、こういうの。

この近隣には多くの古墳・古社があり、神代と人の世が交錯する土地です。
また、訪れたいと思います。

(来訪:2013年11月10日。記:2013年11月)


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